ゼア・ウィル・ビー・ブラッド評価:
≪内容紹介≫《欲望》という名の黒い血が、彼を《怪物》に変えていく・・・。
『ゼア・ウィル・ビー・ブラッド』
アカデミー賞受賞ダニエル・デイ=ルイス主演
石油王の魂の破滅を描いた鮮烈な人間ドラマ
ポール・トーマス・アンダーソン監督作品
<ストーリー>
20世紀初頭のアメリカ―。一攫千金を夢みるダニエル・プレインヴュー(ダニエル・デイ=ルイス)は、山師として鉱山の採掘を行っていた。野心家の彼は、交渉の場にいつも相手の警戒心を解くために、幼い息子H・W(ディロン・フレイジャー)を連れていた。ある日、ある青年から故郷の広大な土地に石油が眠っていると言う情報を得た彼は、西部の小さな町リトル・ボストンへおもむく。作物も育たない見渡す限りの荒野のこの寂れた町で、プレインヴューは次々に安価に土地を買い占めていった。そして、その地で見事に石油を掘り当て、莫大な財産を手中に収め、辺境の地に繁栄をもたらす。しかし、住民の絶大なる信頼を集めるこの地のカリスマ的牧師イーライ・サンデー(ポール・ダノ)は、土地を荒らし、教会への寄付の約束を守らないプレインヴューの存在を、彼が律してきた共同体の秩序を乱す存在として疎ましく感じていた。そんな中、油井やぐらが爆発炎上するという大事故が起こる。爆発により吹き飛ばされたH・Wは、命はとりとめるものの聴力を完全に失ってしまう。息子を襲った悲劇により、辛うじて保たれていたプレインヴューと共同体との危ういバランスは完全に破壊されていく。事業は、上手く進むかに見えたが、人間不信になっていくプレインヴュー。他人との絆を一切求めず、富と権力のみを求める彼の欲望は、怪物的なまでに肥大化していく。欲望と野心、そして腐敗といったさまざまな悪徳をその身に宿し、その魂は破壊への道を辿っていく・・・。
<キャスト&スタッフ>
ダニエル・プレインヴュー: ダニエル・デイ=ルイス
ポール・サンデー/イーライ・サンデー: ポール・ダノ
ヘンリー: ケヴィン・J・オコナー
フレッチャー: キアラン・ハインズ
H・ W: ディロン・フレイジャー
監督・脚本・製作: ポール・トーマス・アンダーソン
オリジナル音楽: ジョニー・グリーンウッド(レディオヘッド)
撮影監督: ロバート・エルスウィット(A.S.C.)
製作総指揮: スコット・ルーディン、エリック・シュローサー、デヴィッド・ウィリアムズ
製作: ジョアン・セラー、ダニエル・ルピ
原作: アプトン・シンクレア「石油!」
[Amazon.co.jpより]
6年ぶりの映画出演で、アカデミー賞主演男優賞をあっさりと受賞したことから察するとおり、ダニエル・デイ=ルイスのハイテンション演技に最後の最後まで引き込まれる力作。彼が演じるのは、役名も同じダニエルで、油田を掘り当てることに夢中になり、富と権力を得ながらも破滅的な人生を送ってしまう男だ。俳優ならば誰もが演じてみたいであろう強烈な役どころ。人間とは思えない残酷さ、卑劣さをちらつかせながら、何かにとりつかれたような欲望と狂気で、2時間 38分、緊張感を途切れさせないのは、やはりデイ=ルイスの名演あってこそだろう。
ポール・トーマス・アンダーソン監督の冴えわたる演出は、石油が噴出するシーンで一目瞭然。天に向かって上がる黒い液体とともに、燃える炎、そこに向かって走るダニエルに、レディオヘッドのジョニー・グリーンウッドによる重低音の音楽も相まって、映画的興奮をかき立てる。デイ=ルイスに負けない存在感を発揮するのが、主人公に対し、つねに反発するカリスマ的な宗教家イーライを演じたポール・ダノ(その兄も含めて2役)。人々を扇動する演説ぶりには鬼気迫るものがあり、ダニエルとイーライが長年の落とし前をつけるラストは、稀にみる衝撃度だ。(斉藤博昭)
感想は…
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posted by 編みかけマフラー at 00:37|
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映画:評価 3